ネオニコチノイド系農薬の危険性 子どもへの影響を知ろう
ミツバチ大量死の主要因とされ、ナチュラルコープでも削減の方針を決定しているネオニコ系農薬。
NPO法人「ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議」代表を務める弁護士の中下裕子さん、環境脳神経科学情報センターの黒田純子さんの学習会より。(2017.12)
ネオニコチノイド系農薬の使用・規制の現状と課題
弁護士 中下裕子さん(NPO法人「ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議」代表)
ここ20年の間に、世界中でミツバチが大量失踪・大量死を遂げています。その主な原因として科学的に証明されたのが、ネオニコチノイド系農薬(以下「ネオニコ」)。タバコの有害成分である、ニコチンに似た構造をもつ農薬です。
特徴は
①浸透性…植物内部に浸透するため、洗っても落ちない
②残効性…地中に長期間残留する
③神経毒性…神経伝達を狂わせる。人にも神経毒性が及ぶ
――の大きく3つ。
害虫を攻撃する毒が作用し脳の働きを狂わせ、ミツバチが巣に帰れなくなったと考えられています。
ネオニコは90年代初頭に開発されて以来、国内で出荷量を年々増やし、20年間で約3倍になりました。
散布が少量で済むため農作業を省力化できる点が強調され、農協により使用を推奨されてもいます。
崩れる〝神話〟危険性明らかに
一方で近年、その「神話」と「現実」の乖離が明らかに。ネオニコは農薬の中でも比較的、人体への悪影響が少ないとうたわれてきました。
しかし実際には、他の農薬と混ぜた時の複合毒性が強いこと、人の体内に入ると毒性が増幅することなどが分かってきたのです。
中下さんは、「農薬は(環境や人体への悪影響から)大量に使えないので、神経毒により〝コロリ〟と効くネオニコが使われるようになった。だが昆虫と人の神経は共通部分が多く、〝昆虫にのみ効いて人には安全な農薬〟など有り得ない。農薬の使用をやめるしかない」と強く訴えました。
海外ではネオニコの規制が始まっています。EUは13年、3種類のネオニコの暫定的な使用禁止を決定。現在も措置を継続中です。
翻って日本は、「規制に関して何もやっていない」(中下さん)のが現状。農林水産省が、農家はネオニコ散布の際に養蜂家と協議するよう求める行政指導を発出しているだけです。
子どもの発達障害と農薬
環境脳神経科学情報センター副代表 黒田純子さん
昨今は発達障害や、「きれやすい」など脳の働きに障害のある子どもが増えていると言われています。
文部科学省の資料によれば、過去約10年間で自閉症・情緒障害の子どもは約3倍に増加。背景にあるのが、農薬をはじめとする有害な環境化学物質の急増です。
農薬が子どもの脳発達に障害を起こすとした論文が増えているほか、米国小児科学会は12年、「農薬にさらされることは小児がんのリスクを上げ、脳発達に悪影響を及ぼし健康障害を起こす」という警告を発表しました。
農薬の中でもネオニコについて、黒田さんは「この20年近くで使用量が急増しているので、要注意」と指摘。
植物内に浸透し、残留すると洗っても落ちないという特性も、認識しておく必要があります。
反面、環境が原因であるなら、発達障害は〝予防〟が可能となります。
黒田さんは「自主規制によって、子ども達を農薬にさらすことから避けられる。ネオニコフリーだけでなく農薬全般のフリーが必要」と結論付けました。
◆質疑応答(抜粋)
質問「(ネオニコ以前に開発された)有機リン系農薬を、うまく使うことはできないか。」
回答(黒田)「有機リン系も人体にとってかなり有害であり、危険。EUでは使用が禁止されている。虫を殺すものは、私たちにも作用する。」