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「私たちが大切にしたいこれからの農業」学習会報告

1/27町田市文化交流センターにて
農業について「知って、考えて、選ぶ」ための学習会を3生協(ナチュラルコープ、やまゆり、自然派くらぶ)合同で開催しました。後半は若手生産者によるパネルディスカッションが行われました。

基調講演 講師 澤登早苗先生

ナチュラルコープ「私たちが大切にしたいこれからの農業」学習会報告
恵泉女学園大学名誉教授、澤登氏

プロフィール 山梨の有機果樹農家の2代目。農学部出身。恵泉女学園に30年務め「食と農と環境をつなぐ教育」を行う。有機農業関係の団体の代表、理事を歴任。

大きく変化する食料、農業、農村を取り巻く状況

コロナ感染拡大で見えたこと
グローバル化で農の分野でも人や物が国境を越えて動くようになった結果、ヨーロッパでは国境閉鎖で外国人労働者が入ってこなくなり、作物の収穫ができない事態になった。日本でも外国人実習生が入ってこなくて大変だった。

ロシアのウクライナ侵攻で見えてきたこと
食料価格の値上がりの原因になった。飼料が高騰した。日本の畜産の飼料は輸入に依存。経済制裁によりロシアの原油、肥料原料が入ってこないことで農業資材が高騰した。

私たちの食べ物は大丈夫?輸入食品の背景にある問題

日本の食料安全保障の確立に向けた取り組みの一つは「輸入穀物などの安定供給の確保」だが、輸入食品の背景にある問題も考えなくてはいけない。

●エビ、バナナなどが多く輸入されているが、生産国での環境破壊、低賃金労働への依存、安全性への疑問などがある。

●水の問題 日本は食料を輸入することによって現地の水も輸入していることになる。生産国の地下水の枯渇、穀倉地帯の砂漠化、海水流入問題などが起きている。カリフォルニアでは有機ニンジンの生産者と地域住民が水を巡り対立した。

●イスラエルのヨーロッパ向けの大規模有機農場では、砂漠にネットハウスを建て、水、堆肥、資材、労働者などすべてを外から持ってきている。これは持続可能な農業と言えるのか考えさせられた。

農業における労働環境(社会正義)、適正価格(公正取引)など、見えにくい部分を見ることが重要。

私たちが大切にしたいこれからの農業

1960年代から1970年代の初めにかけて公害や農薬汚染などが問題となる中、市民運動として「いのちを大切にする社会を作ろう」という世直し運動がおこり、生協運動もこの中で広がって来た。これは生産者と消費者の提携を核にした運動で、自分たちでやらないと欲しい食べ物が手に入らなかった。

21世紀に入って有機農業の環境は大きく展開した。2000年「有機JAS法」成立。2006年「有機農業推進法」成立。2021年「緑の食料システム戦略」策定。

日本では「有機JAS法」が上位だが、基準認証制度だけでは持続可能な農業、社会の実現は困難。

IFOAM(国際有機農業運動連盟)では有機農業の4つの原理(健康、生態系、公正、配慮)を軸に持続可能な社会の実現を目指す国際的な運動を展開している。

持続可能なフードシステムの実現のためにアグロエコロジー(農生態学)が誕生した。全ての人にとって持続可能で公平な世界のフードシステムの再構築が目標で、脱成長社会、小さな循環型社会、食の主権運動などがそれにあたる。その大切さを共有するためには教育も必要。生協にもその役割を期待したい。

パネルディスカッション
モデレーター澤登早苗先生
パネリスト各生協の生産者

ナチュラルコープ「私たちが大切にしたいこれからの農業」学習会報告
(左から)大神さん(アンドファームユギ)神田さん(キテレツファーム)長尾さん(わはは農園)千葉さん(NO-RA)

自己紹介

大神 2013年から八王子を拠点に有機野菜を作っている。

神田 2020年に八王子で新規就農。露地で有機野菜を約40品目栽培している。

長尾 2023年から藤沢、横浜で有機農業を行っている。

千葉 神奈川県愛川町で現在12名で有機栽培を行っている。

澤登 なぜ有機農業をしようと思ったのか教えてください。

大神 一般の人にも農業を知ってもらいたくて、取ってすぐ食べる体験をしてもらうには有機野菜の方がいいと思ったから。

神田 JAグループの雑誌の編集の仕事をしている頃、有機農家の取材をした際に触発され、やるなら有機とこだわって始めました。

長尾 子供のころから農業をやりたかった。子育ての中で子供の将来や地球環境について考えるようになり有機農業の研修を受けて就農しました。

千葉 農業の研修を受けた時有機ニンジンのおいしさに驚き、この「おいしさ」を「誰かのために」とオーガニックに取り組んでいます。

澤登 新規就農で苦労している点と、逆にやりやすいと感じることは?

大神 冬の夕方から夜にかけての収穫は寒く、夏の草取りは暑くて苦労が多い。新規なので地域付き合いをあまりしなくて良いのはやりやすい点です。

神田 新規なのであらゆるものを一からそろえなければならない。農家を継いでいないので親子の意見の違いによるいざこざがないのはいいですね。

長尾 固定観念がないので先入観なしで農業ができるのが良いところです。

千葉 苦労を覚悟して始めたので苦労とは思わないです。

澤登 一番のモチベーションになることは何ですか

大神 消費者と会い評価してもらったときはやりがいを感じます。

神田 自然の中で働くことで「気持ちがいい」「嬉しい」と感じ、「うまい」と思う時。

長尾 子供がおいしいといってくれた時。

千葉 新しく農業に携わる人を育てているが、人とつながっていること。

ナチュラルコープ「私たちが大切にしたいこれからの農業」学習会報告