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危機に瀕している日本の畜産業の現状

ーー飼料、肥料、燃料、資材、電気代、すべて高騰ーー

千葉北部酪農農業協同組合 専務理事 西川聡氏

 7月14日(金)ナチュラルコープ商品センターにて、千葉北部酪農協の西川さんをお招きして酪農の危機的な現状とそれを打破する取組みについてお話を伺いました。キーワードは「自給」と「新しい仕組みづくり」です。
私たちが日々頂いている乳製品や畜産物が、そう遠くない未来に手にすることができなくなるかもしれない、そんな危機を実感し、私たち組合員は何ができるのか、改めて考える機会となりました。
 
◇牛は〝スーパー家畜〟

昨今、環境負荷の大きい家畜として取り上げられることが多い牛ですが、穀物を主食とする鶏・豚と比較して、人の利用できない繊維(牧草など)を利用して乳や肉を生産できる〝スーパー家畜〟なんです。

◇技術進歩の負の側面

酪農は一般的に家族経営が多く、主な収入源は「乳の出荷」ですが、その過程で「肉牛(雄の仔牛と乾乳牛)の出荷」も行い、副収入となっています。しかし近年の技術進歩により、乳牛にするため雌の牛が高確率で生まれるよう操作された「受精卵移植」が主流となり、雄の仔牛が激減、国産の赤身肉は絶滅寸前の状況です。
 
 ◇搾れば搾るほど赤字

日本の畜産業は輸入飼料に依存しているため飼料高騰の影響が直撃します。酪農は他の畜産動物と比べて肥育期間が長くその分多くの飼料を必要としますが、一昨年と比べても輸入飼料は1.5倍近く高騰しており、今後下がる見通しはありません。
また、牛は搾乳機や空調で電気を使うため電気料金の値上げも大きな打撃です。他にも燃料や資材など、すべての生産コストが大幅に高騰し、酪農家は事業を続ければ続けるほど、乳を搾れば搾るほど赤字がふくらむ状況に陥っています。

◇年間50戸が廃業

このような状況でギリギリ事業を続けている酪農家がほとんどで、千葉県では昨年だけでも50戸の酪農家が廃業し、平成30年に611戸だった酪農家は現在360戸になりましました。廃業のきっかけは、設備の故障や保険更新のタイミングなど資金面の問題であることが多いです。

◇3つのビジョン

この危機的現状を打破するために千葉北部酪農協は3つの事業立ち上げに着手しています。

①コントラクター
組合が自ら地権者となり、飼料作物(飼料米)を耕作します。

②TMRセンター
コントラクタ―からの飼料作物を用いてTMR(完全混合飼料)を作成し、生産者へ配送することで国産飼料のコストが下げられます。また、近隣の余剰作物なども受け入れられます。
危機的状況を変えるには輸入飼料への依存脱却が必須であり、そのために飼料を自給する仕組み・施設です。

③肥育事業
酪農の副収入源である肉牛事業を継続するため、事業を1か所に集約し、TMRを使用することで国産飼料の牛肉を生産する試みです。
これらは関東で初の試みなので四苦八苦ですが、輸入原料に左右されない、国産自給率を高めた地球にやさしい、魅力的な酪農を目指します。

◇組合員へのメッセージ

酪農家は今、本当に疲弊してしまっています。夏場は乳量が減るので『購入応援を』と言いづらいのですが、組合員皆さんの応援の言葉がとても励みになります。

千葉北部酪農農業協同組合の生産者情報はこちらからご覧頂けます